う、鱗?
三角形といえば幾何学模様の基本中の基本のような模様ですが、きっちりと並んだ三角形を交互に色分けした文様を、日本の伝統文様では「鱗」と呼びます。
「さ、魚…(θзθ)?」
そうお思いになる方が多いでしょうね。(´ー`)
鱗といえばやっぱり一番に思い浮かべるのは魚の鱗。たしかに、パッと見が魚の鱗に似ているからこう呼ばれるようになったのかも知れませんが、実はこれ、魚の鱗ではなく「龍」や「大蛇」の鱗を表しているのです。
龍や大蛇と言えば、神様であったりその使いとして捉えられる生き物。昔の人々は鱗の文様やしるしを身に付ける事でその力にあやかろうとしたのでしょう。家紋の中にも三角形を並べた「鱗」という種類があり、中でも有名なものでは北条氏の使っていた「三ツ鱗」と呼ばれる紋があります。鎌倉時代、北条時政(源頼朝の義父)が江ノ島弁財天に籠って一族の繁栄を祈願した際に、目の前に大蛇が現れて三枚の鱗を残していったそうで、北条時政はその大蛇を弁財天の使いだとして喜びました。 それもそのはず、江ノ島の弁天さんは竜女(!)だという言い伝えがあったそうで、この鱗を持ち帰って以来、北条氏は三角が三つ並んだ「三ツ鱗」を旗印にしたのだと言われています。
「病魔」が転じて「魔除け」「厄除け」に
今もお守りの袋や七五三の晴れ着、着物や長襦袢の地紋に多く用いられる「鱗」の文様ですが、能楽や歌舞伎の衣装に使われる場合には「鬼女」や「蛇の化身」を示す文様として、それらの役柄に用いられます。そう聞くとなにやら恐ろしい文様のようにも聞こえますが、実際、古代では三角の模様は魔物や病(やまい)を示すものと考えられていました。
ところが、意外なことにこの三角の模様は神聖な場所や物に付けられていることが多いのです。一見矛盾しているようにも思いますが、大昔の古墳の壁画や装飾に三角の文様が描かれたのは、そこに「病魔」のしるしを描くことで 逆にそういった「忌み嫌うモノ」を寄せ付けず、追い払おうとしたのだそうです。
そう、言うならば屋根の上の「鬼瓦」みたいなもんで。(´з`)
そうして、いつしかこの「鱗」の文様も「魔除け」や「厄除け」の意味で使われるようになってきたのでしょう。 女性の33歳の厄年に「鱗」文様の長襦袢を身につける習慣は今でも残っていますし、もともと風呂敷には大切なものを包むことで道中の穢れ(けがれ)から中身を守るという儀式的な意味合いもありますので、まさに風呂敷にうってつけの文様、といったところでしょうか。(´ー`)